奨励賞 歴代受賞者のコメント

平成25年度 第23回 奨励賞

古賀 聡 氏
平成25年度奨励賞を受賞して

この度は、日本心理臨床学会奨励賞を頂きまして大変光栄に存じます。
これまでご指導頂きました九州大学の先生方、病院スタッフの皆様に深く感謝致します。心理劇で出会った患者さん方、事例研究としての発表を了承してくださった方々に感謝致します。
針塚進先生には学部生の頃からご指導頂きました。臨床心理学を学ぶきっかけを作って頂いたのも先生ですし、その後も心理劇実践のご指導、論文作成に関するご指導を頂きました。受賞講演でも話させて頂いたように、私は学生の頃、心理劇に強い抵抗がありました。心理劇の授業はできるだけ先生の目にとまらないように隠れ続け、ワークショップでは非常階段から逃げ出したこともありました。さらに研究活動にも自信がもてず迷い続ける私でしたが、先生はいつも笑顔で、大きな声で「いいとて、大丈夫」と励ましてくださいました。
また、このような弟弟子を遠く沖縄から励まし続けて下さったのが、講演で司会をお引き受け頂いた古川卓先生でした。課題から逃げてばかりの私を見守り、励まし、ご指導頂きました針塚先生、古川先生に深く感謝申し上げます。
そして、西日本心理劇学会の先生方にも御礼申し上げます。少し「おとな」になり心理劇に向き合い始めた私の自己表現の場が西日本心理劇学会でした。博士課程の頃から、毎年、研究発表をさせて頂きました。私のささやかな気づきや疑問でも、先生方は真剣に議論して頂きました。西日本心理劇学会での研究発表、論文投稿を通して心理劇に対する理解を深め、今回の受賞の対象になった論文の作成へと展開しました。西日本心理劇学会や日本心理臨床学会の学会誌に投稿して非常に大切な示唆を頂き、励まされ、自分の世界を創ることができたと思っています。
私は、昨年度、非常勤時代から含めると14年間勤務した病院を辞め、母校九州大学の教員となりました。これからも、これまで導いてくださった先生や先輩方から受けたご恩に報いるべく、後輩たちの指導に取り組みながら、私自身も心理臨床の道に精進して参るつもりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。


東畑 開人 氏
平成25年度奨励賞を受賞して

このたびは栄誉ある奨励賞を授与いただきましたことに、心より感謝いたします。
大学院を卒業して、私はフルタイムの臨床職として働くことになりました。一度、どっぷりと臨床に身をうずめることが自分には必要だと感じていたからです。その理由は二つありました。
ひとつは、臨床で生計を立てるという緊張感の中で、「普通に役に立てる臨床家」になりたいと思っていたことです。それは私にとっては、この学問を選んだことの責任でした。
もうひとつの理由は、この風土や文化の中で生じる雑多な臨床の現実を、心理学することにしか、「心理臨床学」のオリジナリティとクリエイティビティはないのではないか、と少々気負って考えていたことにあります。ですから、私にとって真摯に研究を行うためには、臨床の中に住まうことが必要でした。
いずれにしても、そのような気持で沖縄に飛び、ここ数年、日中はクライエントとお会いし、早朝に論文を書く生活を続けてきました。「心理療法とは一体何だろうか、臨床的に、そして社会文化的に」ということを考え続けています。しかし、当然、何事も目論見通りにはことは運びません。臨床も研究もなんて果てしない道なのだろう、自分はどこかで大きな勘違いをしているのではないか、と途方に暮れていた頃に今回の奨励賞のお知らせをいただきました。ですから、奨励賞は私にとっては字義通り「励まし」となるものでした。
単純な私が少し浮かれて、恩師に御報告申し上げたところ、「これから頑張れということやで」と戒めと激励の言葉を頂きました。その言葉を胸に、これからも自分なりの臨床と研究に取り組んでいこうと思っています。そういうことを通じて、私に多くのものを与え続けてくれている心理臨床学に、少しでも恩返しすることが出来ればと思っています。
末尾となりましたが、多忙な中授賞式の司会をお引き受けくださり、日々ご指導いただいている皆藤章先生をはじめ、山中康裕先生、岡田康伸先生、藤原勝紀先生、松木邦裕先生、片本恵利先生、多くの先生方から受けた大きな学恩と、私に多くをお教えくださったクライエントの方々に深く感謝いたします。

平成24年度 第22回 奨励賞

青木 佐奈枝 氏 (筑波大学)
平成24年度学会奨励賞を受賞して

学会奨励賞受賞のご連絡をいただいたのは春先で、あるケースの件で悩み、自分の至らなさを痛感していた時期でしたので、受賞をありがたいと思いつつも、とても手放しでは喜べずに困惑し、複雑な気持ちで受け止めました。そして、受賞講演をさせていただいたのは夏の終わりで、今度は別のケースに悩み、また、後進の指導で迷いもあった時期でした。受賞講演前の控室で師匠と溜息交じりに会話をしつつ、しみじみお茶を飲んだ記憶があります。それでも講演時は大勢の先生方に集まっていただき、そのお気持ちの暖かさにとても勇気づけられました。講演後に少し前向きな気持ちになれたのを覚えています。ありがとうございました。そして、この原稿を書いている今春は、またしても別のケースについて悩み、仕事全般にも頭を抱えている時期でもあります。
こうして考えてみると私はいつも悩んでいるなと思いました。元々、職人家系に育ち「これでいいと思った瞬間に後退が始まる」「悩まぬところに前進はなし」の空気の中で育ちましたので、悩むということは馴染みあるものではありました。ただ、人並み外れて不器用でしたので家訓はともかく悩まないことには本当に先に進めないということもありました。しかし、若い時分は歳を重ねたら少しは楽に悩めるようになるのであろうと甘い幻想を抱いておりました。…が、そういうわけでもないらしいことがわかる歳になりました。
そのような悩んでばかりの臨床活動の中から生まれた拙い論文に、今回、目に留めて下さった方がおられることを大変ありがたく思います。ご褒美をいただいたような気分になり励みになりました。その一方、ここで甘えずに、今後とも丁寧に仕事をしていこうと気持ちを引き締めるきっかけにもなりました。どうもありがとうございました。
最後に、ここまで私を育てて下さったすべてのクライエント、支えて下さった諸先生方はじめ周囲の大勢の方々に心より感謝いたします。ありがとうございました。今後とも精進致します。

平成22年度 第20回 奨励賞

壁屋 康洋 氏

奨励賞を頂いて

壁屋 康洋 氏

 このたびは平成22年度心理臨床学会奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。
 このような賞を頂けるとは全く思いもよらないことで、受賞の通知を頂いた時は何かの間違いではないかと思いました。私自身、受賞の対象となった論文がそれほど優れたものとは思っていませんでしたので、実際に会員集会の場で賞を頂くに至り、学会として医療観察法医療における心理臨床に対してスポットライトを当てようという意図を持たれたのではないかと推測しました。そうだとしてもそれは非常に喜ばしいことです。医療観察法医療における臨床は、加害者に対する強制医療の中で行われるものであり、新しい分野であるとともに、これまでの心理臨床学のメインストリームとは異なる特殊性をもつものと思って私はこれまでの発表を行ってきました。それは同じ領域で臨床に取り組む仲間と情報を共有するためでもあり、また他の領域の先生方に対して私達の領域を伝えるためでもありました。医療観察法医療の現場で働く臨床心理士は170名を超えておりますので、それほど少ない人数ではないのですが、私の奨励賞受賞を機に多くの学会員からこの領域がより注目して頂けるようになれば幸いです。
 このように、私は自分の論文に対する受賞というよりも医療観察法医療における心理臨床へのスポットライトとして今回の受賞をとらえていますので、同じ領域で働く仲間を代表して頂いたものと思います。それは心理臨床学会で自主シンポジウムを毎年企画されてきた高橋昇先生をはじめとして、共同研究にご協力くださっている医療観察法病棟の臨床心理士の方々、また少ない人員配置の中で通院医療に取り組まれている方々のおかげでもあります。心から感謝申し上げます。

平成21年度 第19回 奨励賞

佐々木 玲仁 氏

奨励賞をいただいて

 この度は平成21年度学会奨励賞をいただき、大変光栄に存じます。誠にありがとうございました。
  受賞の対象になった2本の論文は、いずれも大変地味なものであったと思います。1本目の「風景構成法研究の方法論について」は、風景構成法がテーマになりながら論文中に1枚の描画も載っておらず、ただただ方法論について論じているものですし、2本目の「風景構成法に顕れる描き手の内的なテーマ」は風景構成法の臨床場面でないところで施行し、かつただ1人分の描き手のデータだけを用いて論じているものです。どちらの論文も自分なりに工夫を重ねたものですし、一定の到達点にはたどり着いているという自負が全く無かったわけではありませんが、いずれにしてもこのような形で表に出るという種類のものではないと考えていました。正直なところ、実際に授賞式で賞をいただくまでは半信半疑といったところでした。このような、ひっそりと埋もれてもおかしくない論文に光を当てていただいたことに、本当に感謝いたします。
  これらの論文につながる研究は、もちろん自分一人の力で作り上げたものではありません。厳しく、また親身にご指導いただいた山中康裕先生、桑原知子先生、皆藤章先生、角野善宏先生、調査立案から執筆に至る各段階でディスカッションしてくれた多くの人たち、そして何より調査にご参加いただいた協力者のみなさんに心から感謝申し上げます。
  「奨励賞」というものは何かしらの到達を示すというよりも、これから発展していくことを奨励していただいている賞だと思われます。これからも臨床実践の場で有効で、かつ方法論的に洗練されている研究を目指して妥協することなく研究を続けていきたいと思っております。今回はありがとうございました。


仲 淳 氏

奨励賞を授与していただいて

このたび奨励賞を授与していただき、とてもありがたく、また畏れ多く思っております。
最初はにわかに信じ難く、通知の中の「奨励賞」の文字を目にしたときには、一般会員として奨励賞候補の方を推挙する係のようなものに当たったのかと思ったくらいでした。
  自分のことだとわかったときに喜びの気持ちとともに胸の奥からこみ上げてきたのは、暑い日や寒い日にも休まず面接に通ってきてくださったクライエントのみなさんに対する畏敬の念と感謝の思いでした。深い苦悩や耐えがたい痛みを抱えながらも何とか生きていこうとされるクライエントさんお一人お一人がいらっしゃったからこそ、一介のカウンセラーとしての今の自分がいるのだと、恥ずかしいことながら今回初めて少しからだで自覚することができたような気がしています。 
  振り返ってみれば、私はこれまで本当にたくさんの人に支えていただいてきました。 
学部生のころより長らくご指導いただいています岡田康伸先生、山中康裕先生、齋藤久美子先生、伊藤良子先生、河合俊雄先生、大山泰宏先生。大学院時よりご教示いただいています東山紘久先生、藤原勝紀先生、桑原知子先生、秋田巌先生、皆藤章先生、角野善宏先生。学会発表に際して座長をお引き受けいただきました川戸圓先生。現在天理大学にてご指南いただいています先生方。諸先輩方や後輩のみなさん。こどもパトナカウンセリングセンターのみなさん。そしてお互いに励まし合ってきた大学院の同期の仲間といつもそばにいてくれている家族と両親。ここには到底書き尽くすことのできないもっともっとたくさんの方々に、何度も何度も折に触れて助けていただいてきたからこそ、今の私があるのだと思います。お一人お一人のご厚意に、心から感謝したいです。
私はまだまだ視野が狭く、失敗も多い人間なのですが、これからは人の心に携わる者としての自覚と責任をより強く持って、少しずつでも社会に貢献してゆければと思っております。また今後とも皆様の厳しいご指導とご鞭撻のほどを、どうぞ宜しくお願いいたします。このたびは本当にどうもありがとうございました。

平成20年度 第18回 奨励賞

大前 玲子 氏

奨励賞を受賞して

大前 玲子 氏

 この度は、学会奨励賞をいただきまして大変光栄に存じます。これも、私に関わってくださった皆様のおかげと感謝しています。
  1980年10月、私は東京・八王子での「心理臨床家のつどい」に参加し、その後、「日本心理臨床学会」となった本学会より1982年6月1日に正会員として承認されました。その学会から思いもかけず、このような大きな賞をいただけるなんて感無量です。八王子では大学セミナー・ハウスに全員が泊まりこみ、これから「臨床心理学の学会を新しく創っていこう!」という先生・先輩方の熱気がむんむんしている中で、当時まだ駆け出しだった私はワクワクしながら事例の検討会に参加していたことを思い出します。
  私は、大学を卒業後、子どもの心理臨床がしたくて大阪府下の公立教育研究所で、11年あまり、教育相談係として幼児期から青年期のクライエントとその両親に対して、心理臨床の実践に当たって参りました。心理療法の技法として、ロジャーズのクライエント中心療法とユングの分析心理学をベースに、箱庭療法や描画療法を取り入れていました。その後、転勤により公立小学校に教員として勤務することになりましたが、1989年臨床心理士の資格を取り、小学校現場では心理療法の視点を取り入れた学級作りをテーマに教育実践をしていました。その間、派遣された大学院では、認知療法を研究テーマとしました。2003年、大学院博士後期課程に進学し、今まで実践してきた箱庭療法などのイメージ表現と認知療法の統合についてをテーマとしました。志向の違う心理療法の統合という難しいテーマでしたので、何度もくじけそうになりましたが、今回受賞対象になった2論文がもとになり、博士論文を書き、学位を取得することができました。これも、心理臨床学会誌に投稿する際に非常に有益な示唆をいただき、大いに励まされ、論文を書くことができたからといっても過言ではないと思います。これからも、これまで導いてくださった先生・先輩方から受けたご恩に報いるべく、心理臨床の道に精進して参るつもりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。


土屋 明日香 氏

奨励賞を受賞して

土屋 明日香 氏

 臨床心理学研究を志す者にとって憧れである奨励賞に、まさか私が選ばれるとは思いもせず、ただただ驚き、感謝いたしております。
  私は、「関係性」をテーマに研究しています。受賞対象となりました最初の論文では、情動が、他者の身体と呼応しあう関係の只中から浮かび上がる現象を捉え、「照らしあい」という新しい概念を提示しました。次の論文では、他者理解が、自分の身体で他者の在り様をなぞり、かつずれていくという両義的な営みによって進むことを示し、「なぞり」と「ずれ」による他者理解の様相を明らかにしました。これらの研究を通して、Descartes以来続く、個人の内に「閉じた」独我論的な「心」観を越え、身体性に根ざした「関係としての心」という新しい観点と、それに基づく心理援助の可能性を模索してまいりましたが、その成果を評価していただき、深く感謝申し上げます。
  このような栄誉ある賞をいただくことができましたのは、多くの先生方からのご指導の賜物です。近藤邦夫先生、保原三代子先生、田中千穂子先生、下山晴彦先生、亀口憲治先生をはじめ東京大学心理教育相談室の先生方には実践の基礎をご指導いただきました。また大場登先生、濱田華子先生をはじめ山王教育研究所の先生方、R. Bosnak先生、菅野信夫先生、神田橋條治先生には現場での援助の実際を学ばせていただきました。浜田寿美男先生、森岡正芳先生をはじめ奈良女子大学大学院人間文化研究科の先生方、また東京大学大学院教育学研究科の先生方からは、研究について学際的なお立場からご指導いただきました。さらに学会発表の際、座長をお務めくださいました渡辺雄三先生、上田裕美先生、また匿名の査読者の先生方からも貴重なご意見をいただきました。
  このように考えますと、実践も研究も私個人の力ではなく、「関係性」の網の目の中でようやく形になったものと実感いたします。この受賞を契機とし、今後も実践、研究に励んでいく所存です。ありがとうございます。

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