学会賞 歴代受賞者のコメント

平成30年度 第28回 学会賞

倉戸 ヨシヤ 氏
学会賞をいただいて

h28-1 この度は、第28回学会賞をいただくことができ身に余る光栄に思います。
まずは、推薦してくださった先生方と選んでくださった選考委員会の先生方にお礼を申し上げます。そして私をここまで導いてくださった多くの方々の公私にわたるサポート、とりわけ国内外における師や師と仰ぐ先生方、先輩、仲間からのご指導とご鞭撻、それにご芳情をいただけたことは幸いでありました。ここに心底よりお礼を申し上げます。
私が受けた心理臨床の教育のなかで教えられ、また研究や実践のなかで心がけてきたことは、人間も地球のすべての構成員と繋がっているというゲシュタルト流エコロジーの視点です。心理相談においてはクライエントと、あくまで同時代に生きる人間同士として“今—ここ”という現象学的場で出会い尊重し合うことです。そしてクライエントの内面にある“未完結の経験”や“袋小路(インパス)”状態、また関係性に気づきをもち、“触媒”の役割に徹することを大切にしてきました。受賞を契機に、ややともすると混沌とした感のある時代、そして地球環境が破壊の危機にあるなかで、心理臨床を志す者として何ができるかを模索しながら、これからも継続して研究・実践に励んでいきたいと、想いを新たにしています。

平成25年度 第23回 学会賞

星野 命 氏
学会賞受賞の栄誉を受けて

h25-1本年8月25日~28日に「パシフィコ横浜」を会場に開催されました日本心理臨床学会の大会第2日の午後に平成25年度の学会賞の贈呈式と受賞講演が行われました。そしてはからずも、この私が学会の理事長の鶴光代先生から特別に造られた楯と副賞としての金一封をお手渡し頂きました。誠に晴れがましく、また幸せな瞬間として、私の一生における最高にして恐らく最後の栄誉でありました。
この学会賞は、「学会創設30周年記念誌」によりますと、1982年の創設後から毎年度正会員のうちから1名または2名の、学会の創設とその後の運営に功績のあった方々に贈られてきたもので、20年間に既に20名以上の受賞者のお名前が同誌に記録されています。
私の場合、頂戴した楯に「表彰の理由」として、下記の文章が刻まれていました。
「個人から対人関係、異文化間の心理学へと幅広く研究を展開され、国際的な視点から我が国の臨床心理学の発展に貢献した。また本学会の創設に関わり、その後も役員を歴任され、学会の発展に重要な貢献をなした功績」
まったく身に余る文言で、これを理由に私を推薦して下さった会員の方々とその後の理事会での決定にたずさわった方々に、心から深い感謝を捧げます。
さて、表彰後に私に課せられた受賞講演の内容を逐一記すには余白がなく残念です。ただ東京大学文学部心理学科の同窓生で、心理臨床分野で生前活躍された先輩・同輩の遺影や、私の心理臨床の故郷:名古屋大学精神医学教室の村松常雄先生の偉業と、先生によって登用された臨床の先輩、村上英治教授や、丸井文男教授の遺影と、米国から来名され心理検査法を指導して下さったDr.G.A.Devosのこと、さらに、私が33年間勤務し「臨床心理学入門」などを担当したICUでの教え子たち(現在心理臨床の現場に51名)の一部写真、1991年に金沢市に移ってからの地元の臨床心理士や『金沢こころの電話』の相談員との交流の写真。
そして、最後に「心理臨床の明るい未来に向けて」、「臨より臨に同感」と述べ「心理臨床の実践には定年はなく、『一生現役』」との言葉で結びました。

平成24年度 第22回 学会賞

水島 恵一 氏
イメージ、芸術表現

イメージ面接、図式的投影法を含め、絵図療法、箱庭、音楽、身体運動、劇などを用いた治療法を、いま「イメージ、芸術療法」と一括すると、そのすべてにおいて、概念的には表現も伝達も困難なニュアンス、味わいetcを可能にするという点では一致する。一方、絵画、箱庭療法、イメージ面接、図式的投影法などでは、文字通り「イメージ」が主として視覚イメージが中核となるのに対して、音楽、身体運動、劇療法などでは心身リズムによる「体得」「コミュニケーション」が中心になる。
また筆者は「簡素化された方法」をよく用いている。例えば「箱庭人形劇」では1例として1メートル四方の領域を設け、それに「木1本、草1枚(箱庭療法用具の木の葉を草に見立てたもの)及び 各種 動物」のモデルを用いて作品を作る方法である。
多くの神経症的なクライエントは、はじめ「場面」のごく一角を使用し、自分にあたる動物、人形の動きも少ないが、心理療法の発展とともに、場面も広がり、コマ(動物、次述の人形)の動きも活発になってゆく。
また例えば筆者らが考案した「簡素化された箱庭」(通常、木、草、石、こけし様人形のみを使用)は日本の俳画的特徴を生かし、言語面接、イメージ面接などと併用しうるものであるが、単純化された投影場面の中に深い心性がもちこまれ、かつ発展するところに特徴があり、素材の制限、表現の簡潔性の中で、余白、余韻にイメージを感じとれるという利点がある。

平成23年度 第21回 学会賞

滝口 俊子 氏
学会賞をいただいて

h23-1 学会賞を、ありがとうございました。推薦してくださった方、審査してくださった方、祝ってくださった方、多くの方々に心から感謝申し上げます。
この賞をいただけましたのは、臨床家としてヨチヨチ歩きの時から育ててくださった小此木啓吾先生、臨床心理士としての働きを支え続けてくださった河合隼雄先生のお導きによります。今も、天国から見守り続けてくださっているように感じております。
写真は、学会での受賞の夜、思いがけずに、神田橋條治先生にお励ましいただいた感激のツーショットです。ありがとうございました。
早坂泰次郎先生の主宰されるIPRグループにおいて、心理臨床家ではない方々に鍛えていただいた時期もありました。さまざまな刺激を与えてくださった諸先輩、切磋琢磨し合った仲間たち、出会ったクライエントに感謝の気持ちでいっぱいです。学会事務局の方々にも、お世話になりました。夫を初め家族の、長年の協力にも感謝。
村瀬孝雄理事長、河合隼雄理事長、鑪幹八郎理事長の期に常任理事として学会運営に携わり、編集委員会には、大塚義孝委員長、空井健三委員長、山中康裕委員長、岡昌之委員長、藤原勝紀委員長のもとに委員を務めました。
教育・研修委員長、広報委員長、事務局長としても、ひとことでは言い尽くせないほど多様な体験をさせていただきました。
会員の皆様には是非、学会運営を体験されることを、お勧めいたします。
男性も女性も、老いも若きも、それぞれの資質を発揮して、真に世に役立つ心理臨床の発展に取り組みたいと思います。
心理臨床学の実践と研究と教育に、今しばらく関わりたいと思っておりますので、今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます


畠瀬 稔 氏

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平成22年度 第20回 学会賞

乾 吉佑 氏
学会賞をいただいて


東北大学で開催されました第29回大会(平成22年9月5日)で学会賞を頂きました。このような栄誉を賜りましたことに、学会役員及び会員の皆様に感謝と御礼を申し上げます。
学会賞を頂きましたことは、たいへん光栄であると共に、改めて身を引き締めて精進せよと背中を押される思いも致しました。といいますのも、この心理臨床の世界は周知のように広大で深遠だからです。学問の進展にとどまらず、その認識が社会や関係する専門職の皆さんに認められ、かつ個々の人々の支援に真に役に立たねばならない課題を心理臨床は要請されています。大変むずかしい課題ですが、私たち心理臨床家がこころの世界に歩を進めるためには必然の課題と思います。
この度の受賞理由、1.心理臨床における力動的理解を広めたこと。2.精力的な研究発表を継続されたこと。3.教育において指導的な役割を果たされたこと。4.学会理事として初期から7期まで貢献された功績 の4点は、多くの同僚やクライエントの力をお借りして、私なりに心理臨床をわずかばかり掘り広げた試みです。
確かにこの4点に私の40年間の心理臨床家としての歴史が集約されています。前半は精神科医療における精神分析の実践応用に傾注していました。後半は臨床心理学の先達のお陰で心理臨床の世界に目が開かれ深くかつ広いことを知りました。そして臨床実践・研究・教育の3本柱が臨床心理士の技量を含む質的深化向上を促進してゆく手立てだと教えられ、それを同上の4点として繰り返し実践してまいりました。この学びの過程で、この度学会賞を頂くことになりましたことは私にとって望外の喜びです。
これからは心理臨床家としての残り与えられた時間を、この3本柱をさらに進めるべく心理臨床ひとすじに邁進してまいりたいと考えています。
私を支えていただきました皆さまありがとうございます。


平木 典子 氏
学会賞をいただいて
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学会賞の楯には、「家族療法およびアサーションに関する我が国における第一人者として心理療法における理論と技法を統合する研究に努力された。また、後進の指導にも長年の努力を傾けられた功績。」と書かれています。私の活動の中で、家族療法、アサーション・トレーニング、そして心理療法理論・技法の統合が注目され、学会賞をいただくことになったことをこの上ない光栄に思います。
1960年代、北米におけるカウンセリング教育の中心地ミネソタ大学大学院における特性因子理論に基づくキャリア支援を中核としたカウンセリング訓練は、「クライエントの生涯(キャリア)発達のどこで、何を支援するか」を明確にした臨床と教育の意味、その理念に基づいた臨床家の揺るぎない立ち位置(支援の方向性)の必要性を示したものでした。
それは、1970年代の大学紛争の影響を受けた無気力な学生と人格障害(当時は神経症と精神病の境界的症状と認識されていた)の青年の自立に関わる家族への関心へとつながり、心理内、対人間の両力動に関わりうるアプローチである家族/システム療法は、今やIPI(統合的心理療法研究所)における統合的実践・研究の試みを背景にした私の臨床実践と臨床心理士の教育・訓練の基盤となっています。一方、青年期臨床、とりわけ病理と心理があいまいな学生のニーズと、青年期特有の対人関係の悩みに広く応えようとした試みがアサーション・トレーニングの開発です。臨床心理士の活動には、心理的発達とメンタルヘルスの維持・予防を視野に入れた心理教育が含まれる必要があるでしょう。
個人療法と家族療法の統合、心理的支援と教育的支援の統合、そして心理療法の理論・技法の統合は、生涯を通じて私の実践・研究のテーマであり続けると思われます。学会賞は、学会の片隅で、クライエントのニーズに応えようとしてきた私のささやかな試みに大きな励ましとなりました。ありがとうございました。

平成21年度 第19回 学会賞

岡堂 哲雄 氏
心理臨床半世紀を振り返って

第19回学会賞をいただき、感謝です。昭和30(1955)年に心理臨床のワールドに入り、半世紀が過ぎました。昭和42(1967)年に出版した「基礎臨床心理学(萩書房)」が臨床心理査定と臨床心理面接を基本とする本邦初の臨床心理学テキストと認められました。当時、臨床心理学を開講する大学が増えてきておりましたが、臨床心理学という名の本は精神障害の解説書で、いわば異常心理学のテキストでした。それに挑戦した次第です。
同年に世に問うたもう一冊の本「家族関係の臨床心理(新書館)」には、昭和40(1965)年に家裁調査官実務研究費により東京家裁で施設収容歴のある重度の非行少年8事例に対して行った本邦発の家族集団療法のマニュアルを収録しました。1980年代になり急速に展開しましたが、家族療法のそれまでの歩みは遅々としたものでした。1984年に同志と共に、日本家族心理学会を創設。1990年には、京都で国際家族心理学会がスタートし、初代会長としての 4年間は、世界各国の心理学会に参加を呼び掛けるなど、努力しました。20年目の今年の 5月に、米国アトランタの郊外で第 6回大会が開かれます。
ムックといわれる月刊「現代のエスプリ」誌について、その第97号(1975年)特集:『知能~その開発と限界』を担当して以来、第500 号(2009年)特集:『心理臨床フロンティア~倫理の再構築に向けて』まで、本誌・別冊を含めて49冊の企画・編集を担当いたしました。月刊誌では各冊16篇の論文が掲載されますので、実に多くの臨床心理学研究者、臨床心理士の方々に執筆をご依頼し、快く引き受けてくださいました。執筆者、講読者の皆様方のご協力とご支援により、これだけの仕事をさせて頂きました。学会賞の受賞に際し、あらためて厚く御礼申し上げます。


高橋 雅春 氏
学会賞をいただいて

このたびは名誉ある学会賞をいただき、身に余る光栄です。私が心理臨床の道を歩み出し、最初に出会ったのは非行少年であり、今から60年前のことでした。当時のわが国では、臨床心理学は心理学の範疇に入らず、私はよく「臨床心理学が心理学ならば、トンボ・チョウチョも鳥のうちというところやな」と言っていたものです。それが今や臨床心理学こそ心理学だという時代となり、本学会の会員数は2万2千人を超え、今昔の感にたえません。私の臨床の場も、精神科病院・大学・児童相談所と広がっていきました。
これまで私は、ほかの人々を悩ませたり自分自身について悩むさまざまな人と、数多く出会ってきました。その時、思ったのは、人は、自分の心の状態に漠然と気づくだけであったり、全く気づいていなかったりすることでした。また時には、気づいている心の状態を、あえて話そうとしない人も見られました。
このようないわば「隠された心」を理解するのは、以前は主に精神科医が行う名人芸的な面接でした。しかし臨床心理学という限り、アート的な面接だけではなく、客観的根拠に基づくサイエンス的な理解が必要だと思った私は、さまざまな心理テストを実施し、投映法とくにロールシャッハ・テストや描画テストに関心を抱き用いてきました。投映法は臨床的直観といえるアート的解釈を欠かせませんが、一定の訓練を受けた臨床心理士なら誰もが、同じ水準までは同じ理解ができるように、サイエンスとしてのデータを積み重ねてきました。投映法について、欧米とは文化の異なるわが国の反応様式を明らかにすることで、わが国の文化に合致した実施法と解釈基準をもつツールにしたいと、さまざまな研究を行ってきました。
今回の名誉ある学会賞は、心理臨床の草分けとして、その小道を切り開きながら歩んできた、わが国の第一世代のひとりの、ささやかな努力を認めてくださったものと、本当にありがたく、感謝の言葉もありません

平成20年度 第18回 学会賞

東山 紘久 氏
学会賞を受賞して

このたび名誉ある賞を授与していただき、身にあまる光栄と感激しています。私には直接ご指導を受けた3人の師匠がいます。心理療法の哲学を教えていただいたカール・ロジャース先生、深層心理の働きをと事例の重みを指導していただいた河合隼雄先生、宗教と人格の大切さを感じさせていただいた吉本伊信先生です。今は3人の先生とも鬼籍に入られましたが、3人の先生の人間的なご指導がなければ、現在の私は存在しないと思います。3人の先生は3人とも自分の考えを強制されることがありませんでした。私自身の特性を伸ばし、私自身であることを大事にしていただきました。そして、聞く態度と理解する態度でいつも接していただきました。改めて3人の先生に感謝いたします。
30年も前のことになりますが、ベッテルハイム先生ご夫妻が来日された時、京都と大阪をご案内する役割をおおせつかり、先生が講演されるときにいつもご一緒する機会に恵まれました。そのときの講演で先生は、初心のセラピストは理論も実践も自分の学んだ学派によって違いがあるが、10年の経験をすると理論は違っているが実践の違いは少なくなり、20年経つと理論はやはり異なるが、実践での区別は明瞭でなくなる、と話されました。これは心理療法の実践が、理論をクライエントに当てはめるのではなく、クライエントの理解に理論的背景を援用し、実践自体はクライエント中心になるからです。クライエントを中心に据えなければ心理療法が成り立たないためです。セラピストの人格を高め、器を大きくしないことには、クライエント中心の実践はできないということです。私はまだまだ未熟ですが、これからも先生の教えを胸に精進していきたいと思います。最後になりましたが、私に心理療法の手ほどきを懇切丁寧にしていただきました畠瀬稔先生、仲間として常に一緒に歩んできた氏原寛さんと故一瀬雅央さんに感謝します。

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