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心理教育のための心とからだのストレスアンケートの作成にあたって(重要)


「心とからだのストレスアンケート(31版[25項目+6項目]、19版 [16項目+3項目]、5項目健康アンケート)」の項目は、日本心理臨床学会・支援活動委員会・後方支援WG(心理アセスメント班;臨床心理士で教員、スクールカウンセラー、精神科医などで構成)で検討し精査しました。

被災した人が、トラウマ(深い心の傷)のアンケートに回答することで、フラッシュバックを誘発することがあります。アンケートに回答することで、気分を悪くさせてしまうのです。しかし、このアンケートの回答で、フラッシュバックを誘発するなら、日常のさまざまな刺激で、フラッシュバックを起こしていることが考えられます。フラッシュバックは回復への道のりです。これを機会に、個別相談で、回復を進めましょう。

アンケートは、自分の心身反応を知り、効果的な対応を冷静に考える機会にもなります。トラウマ反応は、外から見えにくいのです。例えば、「悪夢をみる」、「自分を責める」といった反応は、他者に言葉で伝えない限り、<見えにくい>のです。

そこで、台風23号、台風9号、インド洋大津波、子どもの自殺、子どもの殺害事件、いじめの発見などで活用してきた「心理教育のための心とからだのストレスアンケート」をもとに、長期的な実施をにらんで、再構成しました。このアンケートは、以下の特徴を持っています。

  1. 回答する人自身が、自分の心とからだに何が起こっているのか、理解しやすいように、トラウマの反応カテゴリー(過覚醒、再体験、回避マヒ[喪失では否認]、否定的認知)と、生活のカテゴリーごとに、項目をまとめています。質問紙法では、カテゴリーにまとめず、ランダムに、項目を配置する方が、よいとされています。しかし、混乱した状況の中で、一次的スクリーニングとしては、回答する人が自らの心身反応について考えることができる利点があります。
  2. “地震”、“津波”、“災害”といった特定の出来事をアンケートに含めていません。いずれ、月日が経つと、被災地域全体に強い回避反応が生じます。「“地震”、“津波”ということばを聞きたくない」という反応です。そのため、「つらかった・ショックだったこと」と、特定の出来事を記載していません。そのため、被災した地域でなくても、このアンケートは活用できます。「ショックだったことは、災害のことでもそれ以外のことでもいいです」と教示するといいでしょう。この災害では、転校する児童生徒がたくさんいます。そのため、被災地でない地域でも実施でき、かつ、重い反応を抱えている児童生徒をスクリーニングする必要があります。
  3. 担任がアンケートも参考にしながら、児童生徒と話しあえるアンケートとして構成しています。最後に、ポジティブな項目として、勉強への集中、学校生活の楽しさ、友だちとの楽しさを最後に設定しています。
  4. 心とからだのストレスアンケートは3タイプ(31版[25項目+6項目]、19版[16項目+3項目]、5項目健康アンケート)用意しています。

1)5項目健康アンケートは、学校再開直後から使えるアンケートです。睡眠、食欲、体の痛み、イライラの項目から構成しています。そして、自由記述欄に、睡眠や食事やイライラで困っていること、工夫していることのコーピングの設問をいれています。子どもたちの知恵を集めて、よい対処を子どもたちから教えてもらうように工夫しています。

2)19版は、31版から、各カテゴリー3項目ずつ選定したものです。小学生や災害時甚大な地域で、活用できます。

3)31版は、これまでの災害・事件・自殺後の心のケアで活用してきた「心とからだのアンケート」をもとに、DSM−Vなどを参照しながら、構成したものです。中学生・高校生で活用できます。

5.3タイプの心とからだのストレスアンケートの項目は、同じ項目で構成していますので、例えば、小学生のときに回答したアンケート結果と、中学生になって回答したアンケート結果を比較することができます。長期的な支援が必要ですから、統一した心とからだのアンケートを実施することが必要だと考えます。

また、実施の手順としては、心のケアを学ぶ授業として、心理教育とリラックス法を組み合わせて実施してください。また、アンケート実施後は、個別相談体制をとってください。

このアンケートは、統一的に実施する必要がありますので、個人で使用しないでください!ご使用にあたっては、スクールカウンセラーにご相談ください。

 

文責:冨永良喜
作成:2011年3月31日
最終更新:2011年3月31日

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