30周年記念のごあいさつ

 

一般社団法人 日本心理臨床学会

理事長  鶴 光代

 

 一般社団法人日本心理臨床学会は、昭和57(1982)年3月22日に、日本心理臨床学会として発足し、平成21(2009)年4月1日に一般社団法人となり、平成23(2011)年の今年、30周年を迎えています。本学会の創設にあたっては、「本会は心理臨床業務に携わるもの相互の連携協力によって心理臨床科学の進歩と、会員の資質向上、身分の安定をはかることを目的とする」ことが、会則に謳われました。以来、心理臨床研究と実践の発展に取り組み、今日、格段の進歩と拡がりを見せています。

  そうした進展の背景には、心理臨床に対する社会からの強い関心と要請があったからにほかなりません。同時に、そうした社会の期待に研究と実践の両面から応えるべく、会員が研鑽を積んできたからでもあるといえます。毎年開催されている年次大会では、研究発表件数も参加者人数も年々増え続け、9,000人を超える参加者となる年も出てきました。年1巻2号に分けての発行で始まった研究機関誌『心理臨床学研究』は、投稿論文数が着実に増加し、現在では、年6号の発行となり、それでも掲載待ちの論文が多数出てきている活況さです。また、本学会による種々の研究助成への応募も高競争率となっており、有意義な研究成果を生み出しています。そこで、研究面における現在の課題を挙げれば、独自的研究テーマの探索と研究のさらなる質的向上、国際的に高評価となる研究の産出といえるでしょう。

 一方、心理臨床の最新の研究や実践活動の成果を、関係する専門家のみでなく広く一般の方にも伝えていきたいという願いから、平成20(2008)年より『心理臨床の広場』を年2冊、発行することになりました。本誌は、心理臨床の魅力をよりわかりやすく紹介することで、国民の皆様の心理的健康に寄与することを目指しています。社会貢献の一環として、国会図書館をはじめ公共の図書館、高校・大学の図書館等に寄贈しており、大変好評を得ているところです。

  こうした研究活動やその社会的還元とともに、研修活動も重要な柱であり、ワークショップやシンポジウム、研修会等々の開催に見直しと工夫を重ねているところです。研修活動の検討を行ううえで重要となるのは、急増している会員への研修機会を質量ともにどう確保していくかということです。本学会の会員数の推移を見ると、まず、昭和57(1982)年10月16、17日に開催された日本心理臨床学会第1回大会における第1回総会時では、1,277名(正会員1,099名、準会員178名)でした。ところが、約20年後の平成15 (2003)年には13,215名に、そして、設立から30年目の平成23(2011)年4月には 23,530名となっています。特に、この8年間での10,000 名もの会員増は、学会諸活動に転換と刷新を迫るものでした。

 そこで、平成21(2009)年からは、従来の年1回の大会を春季大会と秋季大会に分けて行う開催案を採用しました。研修会も、「専門技法研修」や「臨床心理実習指導者養成研修」など特徴あるテーマに絞った企画や、全国に8地区ある地区ごとのニーズを採り入れた「地区研修会」を新たに行っているところです。幸い、新企画の研修会は参加希望者多数で、研修後の感想も良好です。現在、研修面での課題の一つは、大学院生会員も含めた若手会員の実力向上に向けて、参加しやすい研修機会をどのように充実していくかということです。これまでの「大学院生・初学者心理臨床研修会」をベースに、若手会員の意見を聞きつつ新企画が練られているところです。

  本学会発足当時から、国家資格制度の実現は最重要テーマとして上がっており、昭和60(1985)年には、「資格問題等に関する特別委員会」が正式に発足しました。当初は、関係諸団体との話し合いや全国7ブロックに分けての資格問題に関する地方集会の開催、学会企画シンポジウム「心理臨床家の資格の確立に向かって」の開催など、会員間で熱心に討議され、その活動が推進されていました。しかし、昭和61(1986)年2回常任理事会で、「従来よりの国家認定による資格制度の確立に向けての作業」は諸般の状況から難しいことが確認され、翌年の第6回総会において、「『資格制度』を確立する布石としての」日本臨床心理士資格認定協会設立が、拠出金の予算化を伴って承認されました。以来、臨床心理士認定のシステムは見事に整備され、養成のための大学院も次々に設置されました。そして、平成23(2011)年の今日までに、23,005名に及ぶ臨床心理士資格取得者が生まれ、社会の付託を受けて大活躍をしています。しかし、残念ながら、国家資格制度の課題は未だに果たせずにいるところです。

 本学会は、この課題について紆余曲折を経ながら、平成23(2011)年4月17日の臨時社員総会において、国家資格に関する諸検討を行い、それと同日開催の第11回理事会(一般社団法人になってからの11回目の理事会)において、三団体 提案による「『心理師(仮称)』の国家資格制度の創設」を国会議員各位や関係省庁等に要望するところの「要望書(案)」を審議し承認したところです。

  この「要望書(案)」にある資格の名称には、これまで、本学会が重要視してきた「臨床」の二文字は付いていませんでしたが、要望事項としての「資格の性格」および「業務内容」においては、心理臨床が中核となっているという認識のもと承認の決議となりました。本学会の設立時からの使命である国家資格制度の実現は、全会員および関係諸団体の方々と協力しながら、これからも慎重に、かつ力強く進めていかねばなりません。

  30周年を迎える2011年に起こった決して忘れることのできない出来事は、3月11日の東日本大震災でした。未曾有の大地震、大津波、原発事故災害は、日本国中を不安に陥れ、われわれをして心理支援の責務に向かわせました。本学会と日本臨床心理士会および日本臨床心理士資格認定協会との協同で、東日本大震災心理支援センターを立ち上げ、本学会会員や臨床心理士の熱意と使命感のもと諸活動が、被災県のみならず日本の全域で展開しています。なかでも特記することは、これまでの全国スクールカウンセラー事業における活動実績と、阪神淡路大震災やインド洋大津波、中国四川大地震後の心理支援活動から生成された研究成果が結合して、この大災害に応じる心理支援教育プログラムの諸提案とその実行に至ったことです。被災県に特化された‘学校支援スクールカウンセラー’特別配置という国家的事業のもとで、心理支援教育プログラムが展開していることは、心理臨床活動および研究の社会化といえます。30周年のこの時に、大震災への心理支援という大きな使命を担ったからには息長く真摯に取り組んでいくことが大事です。

 本学会設立30周年はひとつの大きな区切りであり、それを迎えられたことは喜びでもありますが、今ある諸課題に向き合い取り組んでいく覚悟を新たにするものでもあります。ここに、会員および関係諸団体の皆様との協力のもと、心理臨床学の発展とその社会貢献がさらに進んでいくことを祈念致します。

 

 

重要なお知らせ

 

【NEW】 第5回地区研修会(北海道地区)

開催日: 2012年7月15日(日)10:00〜16:30
会 場: ACU(アキュ):札幌駅前

PDF 詳細はこちら(PDF) (会員向け情報)

  >>> お申込みはこちらから

 

事務局からのお知らせ

第32回大会(2013年度)の日程が決まりました

春季大会:2013年5月26日(日) 山形大学

秋季大会:2013年8月25日(日)〜8月28日(水) パシフィコ横浜(担当校:東京大学)

インターネット上での登録情報の確認・住所変更等のご案内

 会員カード導入に伴い、インターネット上での学会登録情報の確認と、変更等の手続きができるようになりました。詳細はこちらをご確認ください。(会員向け情報

 

 東日本大震災心理支援センター ( http://www.jpsc.biz/

 

 支援活動委員会 特設ホームページ

東北地方太平洋沖地震と心のケア

 (日本心理臨床学会 支援活動委員会)

http://heart311.web.fc2.com:80/index.html


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