コミュニティの危機とこころのケア

特設ホームページ(避難所での生活支援と心のケア)

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避難生活を送る方も支援に当たる方もご一読ください。

困難な中にあっても、生活の基本は「食べる、寝る、そして遊ぶ」です。緊急事態にあうと、不眠不休で頑張らなければ、と無理をしてしまいがちですが、大変なときこそ、エネルギー補給と疲労回復に気を配り、誰かと心地よい時間をもつことを心掛けてください。

【各時期の課題と留意点】

衣食住の確保-発災直後から物資供給が安定するまでの時期

[被災した方へ]

避難生活を送る方は、震災にあった衝撃のために、気分がピリピリしているとかボーとしてしまうと感じている人が多いかと思います。これは、衝撃的な出来事にであったときにおこる、自分の心と体を守り、危機に立ち向かおうとする「正常な反応」です。安全な環境に戻り、安心できる生活を送るうちに、徐々に解消していきます。危機事態での「正常な反応」には次のようなものがあります。

  • 食欲不振、不眠、頭痛、腹痛
  • 音や揺れへの過敏さ、いらだち
  • 衝撃的な場面を思いだす、思考や行動がとまる
  • さまざまなものに実感がないなど

食糧や燃料や物資が不足しているために、さまざまな不安や焦りを感じる こともあるかと思います。このようなときは、噂に惑わされやすくなるので気をつけましょう。また、助けを求めたいのに、遠慮する気持ちが強くなってしまう こともあります。以下のように対処してみましょう。

  • 情報の発信元を確認して正確な情報を集める
  • 必要な物資や支援を行政機関や避難所の役員に伝えておく
  • 可能な範囲で避難所運営等の仕事を引き受けて気持ちの張り合いを保つなど

[支援をする方へ]

発災後にまず大切なものは、生活物資と正確な情報です。避難所等で支援に当たる人は、次の事柄に留意してください。

  • 正確な安否情報の提供と安否確認後のねぎらい
  • 水や物資の入手方法や支給計画の迅速な周知
  • 障害者や外国人への情報伝達の配慮
  • 高齢者、障害者、乳幼児への生活上の配慮(特別な支援の提供や福祉避難所の設置)

被災地の外に住んでいる人たちも、被災した皆さんに対して、さまざまな方法で支援の気持ちを表し、暖かな手を差し伸べることができます。

  • 募金への協力
  • ボランティア *活動したい人は各地のボランティアセンターに連絡をとってください
  • ラジオやインターネットでの応援メッセージ
  • 節電(特に東京電力、東北電力管内)、停電への協力
  • 買いしめ、燃料の無駄遣いを控えるなど

 

避難所生活の疲れ-避難所生活が長期間になり心身に疲れが出てくる時期

[被災した方へ]

連日の瓦礫撤去作業に加え、プライバシーを十分に守れない生活が続くことで、多くの人が心身ともに疲れを感じます。その結果、避難所内で苦情が増えたり、体調を崩す人が増えたりします。また、寒い季節に開放的な空間で集団生活をしているために、感染症が広がりやすくなります。次のような工夫をしてみましょう。

  • 避難所自治会で生活のルールや当番表を作る
  • 世帯間の間仕切りや安静にできる静養スペースを設ける
  • 保健師の巡回を要請する
  • できるだけ定期的に入浴する手段を確保する など

また、物資の供給がスムーズになってくるころに、これまで 頑張ってきた疲れがどっと出ることがあります。家庭や職場でやらなければいけないことが山のようにあるかもしれませんが、生活再建までの長丁場を乗り切る ために無理は禁物です。気持ちと体力に若干の“あそび”を残しておくように心がけましょう。

  • 余力のあるうちに積極的に休息と睡眠をとる
  • ボランティアや応援職員を活用して、交代で休むようにする
  • 時間をかけて食事をとる *きゅうり等生鮮食料品があるとありがたい
  • 気の合う人と雑談をする など

疲れすぎて眠れないからと寝酒に頼りたくなる人もいるかと思いますが、要注意です。アルコールを飲むと寝つきはよくなりますが、眠りが浅くなり深い睡眠がとれなくなります。また肝臓やすい臓にも影響が出ます。このように避難所での飲酒はアルコール依存症につながる危険があり、うつ状態におちいる場合もありますので、飲酒はできれば控えた方がよいでしょう。
それ以外にも、慢性的なストレス状態である避難所生活で無理をしすぎると、頑張り続けた疲れが知らぬ間にたまり、ある日それがどっと出てしまう“燃え尽き症候群”というすべての意欲が失なわれてしまうような状態におちいることもあります。元気がでない、何もかも味気ない、何時間も寝付けないとか夜中に目が醒めるなどの症状があるときは、早めに支援者に相談してみましょう。

[支援をする方へ]

心身の疲れをほぐす支援が求められる時期です。散髪やマッサージなど気分がスッキリするサービスが喜ばれます。ストレッチ体操 や軽い運動の教室も歓迎されます。被災した方が、スッキリしたあとに、辛かった体験を話してくれることもあります。そんなときに支援者は、励ましや助言はせずに、大変さをねぎらいながらお話を聞いてください。また、日中に子どもや要介護者のお世話をして欲しいというニーズが高まります。遊びのボランティア や介護者を派遣できる体制が整うと望ましいです。

 

学校再開-ライフラインが復旧して徐々に日常生活に戻って行く時期

[被災した方へ]

物資の供給とライフラインの復旧がある程度進むと、学校が再開されます。子どもたちは学校の再開を楽しみに待っています。学校の再開は、平穏な日常生活の回復に向けた大きな一歩となります。
この頃になると、新しい生活の場を見つけて移動する方がいたり、仮設住宅の募集が始まったりして、避難所の規模が縮小されます。生活再建のためのさまざまな支援制度が活用できるので、市町村の広報や説明会で情報を集めておきましょう。

[支援する方へ]

子どもたちにとって、先生や友達との再会は嬉しいことですが、その半面みんなの顔がそろわないという悲しい現実と向き合うことにもなります。学校再開後に子どもさんの元気がなくなったり、食欲が落ちたりしないか、ご家族で見守ってあげてください。もしも気がかりなことがあったら、つぎのように接してみてください。

  • 心配していると伝えて、優しい口調で事情をたずねる
  • 話すも話さないも子どもの意思に任せて、自由に選んでいいことを伝える
  • 子どもが辛い気持を語るのであれば、「うん、うん」とじっくりと傾聴する
  • 子どもの話に一区切りついたら、友達等を大切に思う優しさをほめて終わる

学校の先生も被災され、避難所運営の手伝いなどで、お疲れのことと思います。まずは素直に学校再開を喜ぶ気持ちを子どもたちと分かち合ってみてください。安心した雰囲気が広がってくると、自分の体験を話し出す子どもがいると思います。安心感の中で自然に気持ちを表すことは、心の傷を癒す作用があります。互いに気持ちを受け止め、各々の頑張りをほめるような話し合いができると望ましいです。ただし、順番での発言を強要したり、一律に作文や絵をかかせることは止めてください。まだ機が熟していない子には”パスあり”が原則です。傷つき体験を無理に表現させることは、痛んでいる傷口に触るようなことになるかもしれません。ひとりひとりの子どもたちは、体験したことも性格も違います。自分のペースで回復の道のりを歩んでいますから、暖かく見守ってあげてください。

 

仮設住宅への移行-震災後の生活を再建する時期

[被災した方へ]

災害後しばらくすると応急仮設住宅への入居が始まります。避難所での集団生活からは解放されるのですが、慣れない環境での新生活にとまどい、寂しさや孤独感が強まって、生活を再建する意欲がしぼんでしまったり、中には、いろんなことがおっくうになって、引きこもりがちになる人もいるかもしれません。あまり元気が出ないときは、後回しにできる仕事は棚上げして、息抜きや気分転換をしてみてください。

  • 交流スペースや趣味サークルに顔を出してみる
  • ヘルパーや保健師の訪問をお願いする
  • 買い物に出たついでにあちこちと寄り道をしてみるなど

[支援する方へ]

仮設住宅で過ごすのは限られた期間ですが、利用者の中には周囲の人とのつながりを失ってしまい、生活を再建しようという張り合いを持てなくなっている人がいます。そのような人には、まず日々の生活の中にささやかな楽しみを見つけてもらえるような支援をします。住宅や家財道具はもちろん必要ですが、味気ない生活に灯りをともすのは、人と人のつながりだと思います。

  • 生活再建の支援制度の説明会に茶話会をセットする
  • 民生委員、ヘルパー、保健師の訪問
  • 高齢者宅への子ども会の訪問
  • 公民館等での交流行事の開催

また、震災を機に県外に転居する方も大勢いらっしゃると思います。受け入れる地域の方は、慣れない土地で生活再建に奮闘する方々を暖かく迎え入れていただきたいと思います。

文責:中垣真通
作成:2011年3月22日
最終更新:2011年3月22日

 

 

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