制 定:平成10年9月21日
最近改正:平成19年3月31日
日本心理臨床学会は、日本心理臨床学会倫理綱領第11条の規定に基づき、この倫理基準を定める。
(責 任)
第1条 本来、会員の専門的業務は、対象者の自発的な援助依頼に応えてなされるべきものである。この場合において、援助依頼者が援助を受ける対象者と異なる場合(親、教師、公共機関等の場合をいう。)は、常に援助対象者の利益及び人権を優先させなければならない。
2 会員は、援助依頼者及び対象者の人種、年齢、性別等の違いによって、提供する援助活動の内容に不当な差別をしてはならない。
3 会員は、援助依頼者の目的又は援助活動の結果が対象者の基本的人権を侵すおそれがある場合には、その活動に従事してはならない。
4 会員は、会員自身の個人的関心若しくは金銭上の不当な利益、又は所属する組織若しくは機関の不当な利益のために臨床業務を行ってはならない。
(技 能)
第2条 会員は、専門職としての知識と技術水準を保持し、及び向上させるために、不断の学習と継続的な研修によって自己研鑽を積まなければならない。
2 会員は、臨床業務においては、学会水準で是認され得ない技法又は不適切とみなされる技法を用いてはならない。
3 会員は、対象者に必要かつ有効な技法であっても、所定の訓練を受けていない領域、対象層、技法等の適用は、スーパーバイザーの下で行う場合を除き、原則として差し控えなければならない。
4 会員は、自分の能力の限界を超えると判断されるときは、対象者の同意の下に他の心理臨床家に協力を求め、委託しなければならない。
5 会員は、原則として、心理臨床業務には、必要な専門教育・訓練を受けていない者を従事させてはならない。
6 会員は、対象者及び関係者に対して、臨床心理学の限界を超えた情報を提供してはならない。
(査定技法)
第3条 会員は、臨床業務の中で心理検査等の査定技法を用いる場合には、その目的と利用の仕方について、対象者に分かる言葉で十分に説明し、同意を得なければならない。この場合において、会員は、対象者が幼児若しくは児童又は何らかの障害のために了解が困難な者の場合は、これらの者の保護者又は関係者に十分説明した上でその同意を得なければならない。
2 会員は、査定技法が対象者の心身に著しく負担をかけるおそれがある場合、又はその査定情報が対象者の援助に直接に結びつかないとみなされる場合には、その実施は差し控えなければならない。
3 会員は、依頼者又は対象者自身から査定結果に関する情報を求められた場合には、情報を伝達することが対象者の福祉に役立つよう、受取り手にふさわしい用語と形式で答えなければならない。測定値、スコア・パターン等を伝える場合も同様である。
4 会員は、臨床査定に用いられる心理検査の普及又は出版に際しては、その検査を適切に活用できるための基礎並びに専門的知識及び技能を有しない者が入手、又は実施することのないよう、その頒布の方法については十分に慎重でなければならない。(第7条第3項参照)
(援助・介入技法)
第4条 会員は、専門的援助を求める対象者に適切な援助・介入活動を行わなければならない。ただし、会員は、対象者側が会員から提案された特定の援助・介入技法を受入れ、又は断る選択の自由を保証しなければならない。その援助を中断する場合も、同様とする。
2 会員が対象者と接遇して行う心理療法、カウンセリング等の援助的活動は、所定の臨床の場においてだけ行うべき職業的行為であって、会員は、原則として、私的な場所又は公開の場でこれを行ってはならない。
3 会員は、現に臨床的関係をもっている対象者との間では、私的交際を避けなければならない。
(研 究)
第5条 会員は、対象者に対して通常の臨床活動以外の介入手続を加える研究計画を立てるときは、研究の意義を検討すると同時に、研究に協力し参加する対象者の心身の負担及び苦痛の程度並びにこうむるおそれのある不利益の内容及び程度を十分に勘案した上で、少なくとも臨床業務を著しく阻害せず、及び道義的にも認められる範囲の計画であることを確認した上で実行に移さなければならない。この場合において、研究の途中に予想外の有害効果又は不利益をもたらすおそれが生じると思われる場合には、その手続を変更し、又は中止することができる柔軟な姿勢で臨まなければならない。
2 会員は、臨床的研究を行うために、対象者に対して援助活動以外の介入を必要とする場合は、事前にその目的及び内容を告げ、研究への協力参加の同意を得なければならない。この場合において、対象者は、参加又は不参加を選択することができる自由及び研究進行中での辞退が可能であることを保証しておかなければならない。
3 前2項の場合において、会員は、対象者が幼児若しくは児童又は何らかの障害のために了解が困難な者の場合は、これらの者の保護者又は関係者に十分説明した上で同意を得なければならない。
4 会員は、研究の終了後、協力参加した対象者に対して、得られた資料について説明し、誤解が生じないように配慮しなければならない。
5 会員は研究の結果について道義的責任を持ち、剽窃などを疑われる記載がないよう留意しなければならない。
(秘密保持)
第6条 会員は、法律に別段の定めがない限り、対象者の秘密保持のために、他の関連機関からの照会に対して、又は対象者の記録の保存と廃棄等については、十分慎重に対処しなければならない。
2 会員は、対象者本人又は第三者の生命が危険にさらされるおそれのある緊急時以外は、対象者の個人的秘密を関係者に伝えてはならない。この場合においても、会員は、その秘密を関係者に伝えることについて、対象者の了解を得るように努力しなければならない。
3 対象者の個人的秘密を保持するために、研修、研究、教育、訓練等のために対象者の個人的資料を公開する場合には、会員は、原則として、事前に当該対象者又はその保護者に同意を得なければならない。(第7条第1項参照)
4 前項の同意を得た場合においても、会員は、公表資料の中で当人を識別することができないように、配慮しなければならない。
(公 開)
第7条 会員は、臨床的研究の成果を公表する場合には、どんな研究目的であっても、原則として、その研究に協力参加した対象者の同意を得ておかなければならない。研修のために自分の担当した対象者の事例を公表する場合も、同様とする。(第6条第3項参照)
2 会員は、専門家としての知識や意見を、新聞、ラジオ、テレビジョン、一般大衆誌、一般図書等において公表する場合は、内容の公正を期すことに努め、誇張、歪曲等によって臨床心理学及び心理臨床家の専門性と信頼を傷つけることのないよう十分な配慮をしなければならない。
3 会員は、心理学の一般的知識を教授するために使われる入門レベルの教科書若しくは解説書又は一般図書等において、心理検査に用いられる刺激素材の複製又はその一部をそのまま提示し、又は回答・反応に関する示唆に類するものを公開して、現存する心理学的査定技法の価値を損じないよう注意しなければなら
ない。(第3条第4項参照)
(他専門職との関係)
第8条 会員は、自分の担当する対象者への援助が心理臨床活動の限界を超える可能性(例えば医学的診断と処置)があると判断された場合には、速やかに適切な他領域の専門職に委託し、又は協力を求めなくてはならない。
2 会員は、現に他の専門的援助を受けている者が援助を求めて来談した場合には、対象者の同意を得て、その継続中の専門職との間で最良の方策について協議し、適切な取決めを行わなければならない。
(記録の保管)
第9条 会員は、対象者についての臨床業務及び研究に関する記録を5年間保存しておかなければならない。
(倫理の遵守)
第10条 会員は、専門的知識及び技能水準の向上と平行して、倫理意識の向上を目指して研鑽を積み、これを遵守するようにしなければならない。
附 則 この倫理基準は、平成10年9月21日から施行する。
附 則 この倫理基準は、平成11年4月 4日から施行する(一部改正)。
附 則 この倫理基準は、平成12年3月25日から施行する(一部改正)。
附 則 この倫理規準は、平成19年3月31日から施行する(一部改正)。
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